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#41 けいの心臓の手術のこと - 8

Kay in 2014, at Laura Ingalls Wilder Museum, De Smet, South Dakota

薬の効果を確かめる次回の診察日までに、手術に向かうのかどうか、最終結論とは言えないまでも、結論めいた覚悟を次回までに心の中に持って行こう、と思っていました。

 

すぐに手術をしないといけないのではないか、いやいやそれはあまりにギャンブルな短絡的な思考だよ、一体誰のための手術なんだ、けいの希望はどうなのよ、飼主が決めてあげなくては、またもやひとりの頭の中がぐるぐるぐるぐる・・・・

 

そんな中、ちょうどそろそろ次回のジャスミンさん診察という頃、けいとわたしがボランティアで行っているセラピードッグの団体から、東京のホテルで行われるアジア獣医学会でのセラピードッグモデルとしてのけいの参加依頼がありました。各国から集まっている獣医さんたちの学会で、日本での介在動物活動を紹介するブースを日本動物病院協会が出展するので、そこで各国の獣医さんたちにモデルセラピー犬として可愛がられる役目です。けいは大喜びで参加しました。東京のホテルが会場で、そこでは最先端の研究発表や文献などが集められ、現在の天皇陛下ご夫妻もお出ましになり大変大きな学会でした。ジャスミンの上地先生の研究発表は最も人気のあるワークショップのひとつで大盛況のようでした。

休憩時間に何かわたしにも参考になる文献などないかなと興味本位で、様々なブースを探索していると興味深い本がありました。「イヌの僧帽弁閉鎖不全症 診断・管理の理論と実際 第3版」です。売れに売れて、2日目なのにすでに最後の一冊です。もちろん、獣医師向けの本なのでとても専門的ではありますが、日進月歩の分野での最先端の状況が掴める、インターネットなどでは得られない情報が詰まっているのだと感じ、私にとっては高価な本でしたが買い求めました。その晩から早速読んでみると、まさに理屈でのみ決断できるタイプの私に必要な情報が随所にありました。

 

まずは基礎的なところから。診断の方法、検査の方法、検査結果の見方。飼主への説明の方法なんていうのもあります(笑)日本で広く取り入れられているステージ区分(ACVIM)の詳細、そしてそして、さまざまな症状を危険因子として評価して、長期予後を算出する方法・・・。例えば、けいのようにステージB2の中でも、心雑音が大きいケースの場合は予後が悪い傾向があるからマイナス何点とか、急速に悪化した傾向の場合は、など読み進めて学んでいき、中央平均余命値を数値として見ていきました。イヌという動物がいかに短い単位で余命を計られているのかを実感しました。そしてけいがこのままで手術をせずに過ごした場合の、中央平均生存率を20ヶ月後40ヶ月後と可能性の数値を追いました。ついには会社人時代から仕事上で重大なことを決定する時にいつも私が用意する対比表を作り、考えを数値化していきました。


それまでぐるぐるぐるぐる・・・行ったり来たりしていた頭の中を、表にして数値化したものを埋めていきました。メリットデメリット、これから出てくる症状の段階とそれごとの平均中央余命値。ポイント制でまとめました。

 

わたしはこの表を数日間、机に置いて眺めていました。

この段階でほぼ、私の心は手術をする方向で定まりました。

 

では、いつ?