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#33 愛犬が薬をのみはじめるとき

Originally posted on March 04, 2019 - Photo Kay on the Valentines Day 2018

on the Valentines Day, 2018

みなさま、こんにちは。

すっかり春めいてきて、なんとこのブログを始めてから一年が経ちました。

 

月並みな言い方ですが、なんて時が経つのって早いんでしょうねぇ。こんな調子でこういう一年を70回80回、100回重ねていくといつの間にか今世での終わりをむかえるのですよね。うーむ、私はあと何回あるのかなぁ。

 

今日は、またまた旅の話ではなく、シニア期にさしかかる愛犬と暮らすときに多くの人が通る段階を経験した、小さな小さな道標のお話をしたいと思います。

 

けいは2014年、4歳を過ぎたころに、人間ドックならぬ「ドッグドック」で心臓の左心房に少量の血液の逆流が認められました。

少し詳しくお話すると、かかりつけの動物病院で定期検診で心臓エコーを受けたところ、別の病気の疑いがあり循環器で有名な教授のいる大学病院で診察を受けるよう紹介されたことがきっかけでした。おかげさまで恐れていた、別の重篤の病気の疑いは晴れました。しかし左心房と左心室の弁がきちんと閉じない、そのために酸素をたくさん取り込んで身体中に送られるはずのきれいな血液が、心臓というポンプで送られる際に少しだけ逆流してしまう「僧帽弁閉鎖不全症」という病気であるということがわかりました。

 

2014年の段階ではまだ心雑音も聴診器で認められなかったので、こうして定期検診で「心臓エコー」で調べることでしか発見することができないレベルでした。まだ4歳と年齢が若かったことと、逆流の量も僅かでそれに起因する症状もなかったころから、薬もご飯も運動もそのままで年に一度、よく言われる「経過観察」をしていくこととなりました。

 

けいが二次診療指定病院として紹介された大学病院には、先に申し上げたように、獣医学の循環器科において日本でも有名な先生が、循環器の専門医を目指す研究室に所属するインターンの先生たちを指導するティーチングホスピタル業務の一環として、週に一回午前中に外来動物を診てくれるということになっています。だいたい8人から12人の研究室の先生方が一次診療、二次診療をして検査を行い、すべての診察と検査の結果を教授を交えてひとりひとり診断を下すという、「ドクターG」というテレビ番組みたいなやり取りを行います。飼い主が同席することも、しないこともあります。

 

高度な循環器の検査機器も用意され、小さなけいの心臓のさらに小さな左心房と左心室の逆流の量やその早さも画像化して測ることができます。定期的に同じ病院の同じ教授の元にデータを細かく残すことによって、毎回の心臓の大きさの違い、左心房の肥大の様子やその病状の進具合やその早さなどを確認することができます。また、その先生方のやり取りの中で、僧帽弁閉鎖不全症といってもどの子も同じように進んでいくとは限らないということを学びました。残念ながらみるみる悪化してしまうこともありますし、経年を得てゆるゆると進んでいくことも、また若い頃から逆流は認められてもそのまま全く心雑音などの症状が低いレベルのままである幸運なケースもあるということです。

2014年以降、けいは体調を崩すことも何度かありましたが、その度に症状が落ついてから毎回大学病院で心臓の様子を確認してきました。心臓由来症状というのも心雑音以外認められず、けいは大多数がたどる、「経年でゆるゆると進む」タイプであるとわかってきました。数年経ち心雑音も認められるようになり、それも「ほとんどわからない」レベルから「聴診器でわかる」という段階になり、また心臓肥大自体はまだ認められないものの、左心房の大きさの比率が前年に対し緩やかとはいえ指摘されるようになりました。重症の動物たちを日々たくさん診ている教授からは、「誤差のレベルですよ」と言われましたが、私はけいの小さな心臓の中で日々起こっている変化を心に重く受け止めるようになりました。昨年の春からはドッグランでも全速力で走っていいのは3走りまで、としました。

 

今年に入りけいとは別の大学の付属動物病院に勤務する友人が家にご飯を食べに来て、けいとひとしきり遊んでから、落ち着いたけいを時間をかけて診てくれていました。そして、少しこれまでと違うことはないかと言いました。聴診器で心音を確認してもらうと、振戦までいかないけれど次回の定期検診を早めに行ってもいいのではないかと心配そうに進言してくれました。

 

そんな心配もあり、3月に入ってから大学病院に行こうと思っておりましたが、時間を作って少し早めに2月中に連れて行くことにしました。結果、現段階では血液の逆流量や左心房/左心室の大きさや全体の心臓自体の大きさには大きな変化はありませんでしたが、心雑音のレベルが1段階近く悪化していました。

 

犬の僧帽弁閉鎖不全症には、大きく分けて二つの治療プランがあると言われています。ひとつは内科治療というか投薬による対処療法で進行をゆるやかにすることを図るというもの、もうひとつは動きの悪くなってしまっている僧帽弁自体に外科的な修復を試みる心臓手術を行う外科的な治療です。けいがかかっている大学病院の研究室でも最近になって外科的な治療が始められたということですので、それも視野に入れつつ今回から投薬治療をはじめることにしました。

 

薬を飲み始める時期というのは、一応は獣医診療に置いてガイドラインがあるということで、ある一定の症状(多くの場合は心室の肥大が認められたときのようですが)が出た段階で獣医師に勧められることが多いようです。けいのこの大学病院の教授は、私の限りない理屈っぽさをこの数年で熟知しておられ、私に様々な選択をさせてくれます。例えば、今のこの早い段階で飲み始めて予後が改善されたという関係の臨床試験結果がはまだないこと、薬の種類による働きの違いと日本で認められたばかりの新薬によるタイプ別の治療結果、などを解説してくれます。私も予約の日までにかなり予習して行くように努めておりますので、その場で次の半年、2年くらい先までの計画と見通し、などを確認できるようにしています。前回、薬を飲んでみないことを選択した結果も自分の責任として受け止め、今回も私の選択でしたが「エースワーカー0.5」という薬を朝晩飲み始めることにしました。

 

簡単にいうとこれは人間の心不全などの治療にも使われる「ACE阻害薬」の動物用の薬品です。これは、きれいな血液が十分に送り出せなくなったと判断した身体が、隅々まで血液を送り出そうと血管を縮めるために排出されるホルモンを抑える薬です。庭に水をまく時に、ホースの勢いを強めようとしてホースを口を指て抑えることがありますよね。あれを身体の中で自動的に行おうとするホルモンが出るのです。しかしこれは心臓にもたくさんの負荷をかけることになりますのでよくありません。よって、このホースを細くするホルモンを抑えることで心臓への負荷を軽くしてあげるのです。これで、心臓肥大の進行をゆるやかにします。

 

よくわんちゃんや猫ちゃんの心臓病の薬を一度飲み始めたら一生飲まないといけない、などと聞いたことはありませんか?これはどういうことなんだろうと常々考えていました。例えば、脳神経の薬などならわかるのです。心臓の薬でなぜ?こういう疑問は考えてもわかりませんので、率直に聞くようにしています。教授の回答は思った通りで「そんなことはない」ということでした。例えば、心臓の機能が投薬なしには通常通りの機能をしない段階、投薬なしには肺水腫を常に起こしているような状態では、薬を飲まないでいることは命の危険がありますので飲まない選択肢というのはないわけです。ただ、先に言ったように、心臓の機能を確認した上でその時の最善の選択として獣医師と飼主が積極的な対処療法として投薬を決断したものは、例えば現在のけいの状況などでは極端な話もしたとえ投薬をやめたとしてもすぐにどうこうなるものではない、ということです。薬を服用しなかった状況に戻るだけです。危険性はないとは言いませんが飲まないとすぐに危険になる状況ではありません。(あくまでけいの現在の場合です。どうぞご注意を。)

 

小型犬によく見られる心臓病といっても、犬種が例え同じでもその子その子によって進み方も治療法も変わってくること。犬種が変わればなおさらのこと。インターネットに書いてあることがすべてあてはまるわけでもないですし、迷信めいたバックグラウンドなしの情報を信じ切るのは危険です。闇雲に数人の獣医師の意見だけを聞いて納得する必要はないと思います。信頼できる獣医師というのは、私の個人的な意見では、なんでも質問できる相手だと思います。理想をいうと、今まだ認可されていない治療法や薬などについても話し合えるくらい。こちらの十分な予習も必要ですけれども。相手に自分のタイプを知っていただくことも大事だと思います。例えば、私は優しくわかりやすくいわれることより、多少専門的でも詳細に情報提供される方が決断を下す上で有難く感じるタイプです。すべては自己責任と考えていて明確にそれも伝えています。

また、私はお金をかけるところとかけないところを明確にするようにしています。残念ながら潤沢な資金があるわけではないので、例えば信頼している大学病院での検査や治療方針相談などにはお金をかけ、一旦治療方針がきまりホームドクターに日々の薬を処方してもらうには、できるだけ安いところでお願いするといった次第です。全く同じ薬でも2倍も3倍も違う金額ということもありますので、そこは前もって確認して選択するようにしています。また、海外に行った際に、安ければそこのドクターでフィラリア・マダニ薬などは出してもらうようにしています。

 

 

長々お話ししてきたのですが、こうしてけいは朝晩ご飯の時に、小さな米粒の1/3ほどの白い薬を飲み始めました。今日で1週間です。けいは薬を飲んでも特に変わった様子はありません。よく食べ、遊んで、眠っています。もちろん心雑音も相変わらずです。ただ、毎食けいのお薬を準備していると、けいはけいでいるだけで私にとって完璧だけど、薬の手助けが必要な身体なんだと思わされます。私 私が老年に向かっているより早くこの子は違うところに向かっていくんだと気付かされます。一食一食半日半日一日一日ひと月ひと月が有難い宝物なのですねぇ。

今年の春も、けいにも私にも一度しかない2019年の春なのですね。