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#32 (余談)ご無沙汰しております。街はすっかり秋です。

Originally posted on November 04, 2018

ブログを読んでくださる皆様、ご無沙汰しております。

もうそろそろ年末の声も聞こえてきそうな時期ですね。すっかり公園の落ち葉もその香りを深めてきました。どんな秋をお過ごしですか。

 

続きがすっかり先へと進まないブログではありますが、おばねえさんはというとせっせとひとりで仕事に励み、そしてこの夏から私にとって初めての、あることに取り組んでおりました。なんでしょう、初めてのことって。

今回はそのお話を少しだけさせてください。

 

 

話しは今年の春にさかのぼりますが、アメリカへの旅に出る日も間近となったころ、けいとおばねえさんはいつものように自転車をこいで毎日行く公園へと向かっていました。その途中、ちょっと寄り道をして線路際の細い道を走り抜けていた時に電柱に不動産屋のチラシを発見。それは、だーれも買わないような、東京オリンピックの時代のそのさらに少し前に建てられた古い古い小さな家の広告でした。いつもは気にもとめないのですが、なんとなく気になって引き返しチラシを手にしました。いつもの公園のほど近く、住宅地の奥まったところに建てられた古い古い木材家屋。不動産屋さんに電話してみると、なんでも老夫婦が長年そこで暮らしていたけれど、おじいちゃんが亡くなりおばあちゃんもいよいよひとりで暮らせなくなり老人ホームに入ることになり、この二人の家が売りに出されたようだということでした。不動産屋さん云はく、小さい上に細い路地を入っていく立地のため、そう簡単に買い手も見つからないだろうということで、「タダのような値段」(注:私にとっては全く違いますけど)で買い手を探しているということでした。翌々日、けいと一緒に家を見に行くと、古いけれどとてもしっかりした造りで、古い小学校の床板のようなフローリングと古い土壁、おばあちゃんがひとりで暮らしていたときも掃除が行き届いていたのだろうなぁと想像するような家でした。

私たちが今住んでいる小さな家はマンションで、手狭ですが立地がよく、会社員の頃に将来転勤しても誰かに住んでもらえるだろうというような気持ちで引っ越してきた家でしたので、現在のように毎日家で仕事をするとなるとけいと二人きりとはいえ少し狭さが気になるところでした。

その古い家を見つけたのは、けいとアメリカに行く2週間前でしたので、十分に考える時間も猶予もありませんでしたが、私はなんだか誰かに引き合わされたような気持ちになってついにこちらの家をわたしとけいの次の住みかとすることにしました。ずいぶん若い頃にアメリカで、その頃はまだ若かったマーサ・スチュワートが古い家をリノベーションした本を、購入しました。引っ越しても大切に手元に置いておいた本をついに参考にできる日が来たのだとワクワクして・・・

 

 

さて、アメリカ・カナダから帰ってきて、早速この古い家をおばねえさんの限られた予算(それこそタダみたいな予算)で私の好きなように一緒に住めるようにしてくれる大工さんを探してみましたが、そう簡単に見つかりませんでした。最初に不動産屋さんが紹介してくれた宮大工系大工さんは、わたしの夢の話に付き合いきれなかったのか見積もり途中で頓挫。次の大工さんもその次の大工さんもわたしが熱心に語り出すと連絡が取れなくなるという悲しい展開に。自分で好きなデザイナーさんを探してくるとなんとリノベーション費用が家より高い結果に。いやはや、「なんということでしょう」という世界は、現実の世界ではなんとむずかしいことでしょう。
そんな中、夏の盛りを過ぎたあたりにひとりの大工さんを紹介してもらいました。のんびりした感じの歯がないおじさんでしたが、わたしの話を辛抱強く聞いてくれました。そしてわたしの優先順位に沿ってどうすれば大事なところを削らずに、他を工夫してコストを削れるか幾つかアイデアをくれました。安く上げるため、イケアに何度も通い、いろいろな部品や出来合いの家具を購入することにも付き合ってくれました。夏のあいだの気が狂いそうな忙しい仕事の合間を縫って、歯のないおじさんとイケアに日参しました。おじさんと毎回待ち合わせするイケアが、まぁおじさんに似合わないことこのうえないのですけど(笑 でもおじさんは小さな棚の取手に至るまで、こういう感じがいいと思うんだけど、というと付き合ってくれました。   

 

いかんせん、のんびりさんなのでどんどんスケジュールもずるずる伸びていくのですが、ちょうどわたしもたて続けに出張が入ったりしたのでまあ焦ってもしようがない、と腹をくくっておりました。歯のないおじさんの他に、背の曲がったお歳の「師匠」と呼んでいるおしゃれな大工おじいさん、それに「ワカモノ系」と呼んでいる(でも30代)若い大工さんの3人でせっせと作ってくれています。けいとわたしは仕事のない日はのんびり自転車で3人分の「無糖」と「微糖」とコーラを買って、見に行くという感じで楽しんでおりました。あーでもないこーでもないと細かいことを話し、見学させてもらっています。おじさんたちのいいところは、わたしが質問するとどんなくだらないことでも答えてくれるところと、こうしたいけどどうかなと聞くと、率直に意見を返してくれるところです。わたしが裏紙に書いたデザイン画を壁に貼って作ってくれます。できることはすぐにいいよ、と変えてくれ、できるけどコストが問題になると高いし無駄だよ、と言ってくれる場合もあります。わたしがトイレのドアはいらないと言ったら目を丸くしていました(笑 あちらに作りたいプランがあるときは、わたしがそれを受け入れることも多くありますので、どちらかというと「わたしの家」というより「おじさんたちと元おばあちゃんが住んでいた家を共同で改造している」という感じです。マーサ・スチュワートの世界とは大きく違っていますけど(笑

けいは現場が大好きで帰りたがりません。3人とも犬を飼っている愛犬家なのでけいは現場でも甘やかされて可愛がられています。ということで、もうあと2週間と少しで、わたしとけいの初めての家が住めるようになるということです。果たしてどんなことになりますやら。