#31 小さな頃から夢見ていた場所へ - PART 3

Originally posted on July 26, 2018

 

「おばねえさんにとって、これはとっても大切なことなんだからね、いい子にしててね」とけいに言い聞かせ、窓を全開にした車に残し(5月のPEI、この日は20度くらいの気温です)、いよいよ私はグリーンゲイブルスの玄関に足を踏み入れました。

建物の内部に一歩足を踏み入れると、外の明るさから一転、灯りのない玄関は薄暗く涼しい空間でした。壁は一面にビクトリア朝特有の派手な模様の壁紙です。つたの植物、アイビーの模様になっていました。この壁紙は数年に一回、全面手で張り替えられるそうです。

玄関のポーチを左手に入ると、まだ小さかったアンがグリーンゲイブルスの中でも神聖な場所だと思うと言っていた客間があります。客間に入るときは普通の部屋を歩くときよりそっと歩くんだとアンは言っていました。客間には19世紀初頭、当時の高級素材、馬の尻尾の毛で終われた生地を張った長椅子があり、亡くなった先祖の髪を使った花飾りも額縁が壁に飾られていました。アンがダイアナをお茶に呼ぶとき、客間に座っていい?とマリラに聞いたんだっけなぁ。そしてマリラに使わせてとおねだりしていた(そして却下された)、牧師さんがお茶にいらしたとき用の「薔薇の蕾の茶器」が、テーブルにセットされていました。

 

モンゴメリが実際に弾いたオルガン、実際に使用していたタイプライターも、ありました。大文字のMがきれいに打てないと、モンゴメリが言っていたタイプライター。

   

客間の隣にはマシューの部屋です。19世紀のこの地方の家の作りでは、一階のキッチンや客間の近くにはご年配の方、特に男性の年配の方の部屋用にするのが普通だったそうです。マシューの人柄を表すような、さっぱりした飾り気のない部屋。ベッドと洗面所だけの小さな部屋でした。マットレスの中身は何が使われているのかと係員の方に尋ねたところ、家畜の動物たちの毛が多く使われていたそうです。    

 

一階にはその奥にダイニングスペースとキッチンパントリー、それに食器などを収容してあるセッティングルーム、そして裏庭に続くポーチがありました。グリーンゲイブルスといえばキッチン。マリラの焼いてくれる「焼き菓子」(村岡花子さん風に)、牧師さんをお迎えしてのお茶の際には何種類も焼くケーキ、リンドのおばさんが訪ねてきたときにアンがふんわりとこしらえたホットビスケット等々・・・どんなに美味しいものたちがここから生み出されていったんでしょうねぇ。そしてもちろん、あの「いちご水」が、「びんに半分ばかり残って」置かれていました。

 

 

なんだかその頃にはすでに私は、初めてグリーンゲイブルスに来た日の11歳のアンのような気持ちになっていました。

 

ワクワクしながら階段を上がりきってすぐに左手にあった「東側の切り妻の部屋」を覗きこみました。他の部屋とは趣が異なり、若々しい青春時代を謳歌するアンの部屋らしく、「緑のモスリンのカーテン」女性らしい洗面道具のしつらえ、などが迎えてくれました。学校でギルバートの頭に打ち下ろして割ってしまった石板(Slate)が部屋の入り口近くに。ダイアナとローソクの明かりで合図しあった窓辺、アンが到着した晩から置いてあった固いふくらんだビロードの針山。

 

そして、アンがグリーンゲイブルスでの初めてのクリスマスにマシューからもらった「茶色いふくらんだ袖のドレス」がかかっていました。

 

肉眼で初めて見るこの部屋、幼い頃から何度となく頭の中で想像してきた部屋を心ゆくまで眺めていました。 

 

アンの部屋のお隣には、アンが憧れた「客用寝室」がありました。

 

いかにも心地良さそうなキルトがかけられたベッド。アンが潜り込んだベッド下のスペース。

 


マリラの部屋は他の部屋よりも少し広々としていました。几帳面なマリラがきちんと整えたベッド。マリラのよそいきの黒レースの肩かけがきちんと椅子の背にかけられていました。そしてもちろん、紫水晶のブローチが置かれていました。

全ての場面を私の目に留めておきたくて、何度も何度も細かく見て回りました。どんな小さな箇所も見逃したくないと思い、丁寧に見ていたので、気がつくと他に4、5人いた観光客はすべていなくなり、私だけが幸せな気持ちでこの愛らしい家の階段を降りて裏庭に戻って行きました。

 

けいは丘の駐車場に停めた車の中で、旅の疲れからかぐっすりとお昼寝していました。
幸せすぎて少しまだぼーっとしていた私は、
気持ちのいい風が吹く中、嬉しそうに起きてきたけいを連れて
「恋人たちの小径」へと向かいました。

 

(続く)